セルフチェックで当てはまった方へ——唾液は、整えられます
前の記事「唾液が少ないかチェックする方法」を読んで、いくつか当てはまった——。 そんな方は、今日の記事がきっと役に立ちます。
「ドライマウスって、どうにかなるの?」と思われているかもしれません。 結論から言うと、日常の習慣を少し変えるだけで、唾液の分泌は改善できる可能性があります。
薬が必要になるケースもありますが、多くの方は日常の「口の使い方」や「生活習慣」を整えることで、唾液を増やす方向に向かうことができます。
歯科衛生士として患者さんにお伝えしているセルフケアの中から、特に効果を実感しやすく、毎日無理なく続けられるものを5つ厳選しました。 「今日からできる」を基準に選んでいますので、気になるものからひとつずつ試してみてください。
唾液を増やす具体トレーニング5選
① 唾液腺マッサージ——1日1分で分泌を促す
唾液は、耳下腺・顎下腺・舌下腺という3つの「唾液腺」から分泌されています。 これらを外側からやさしく刺激することで、唾液の分泌が促されます。
やり方
耳下腺(じかせん) 耳の前、上の奥歯あたりに人差し指〜薬指を当て、後ろから前に向かって円を描くようにやさしく10回まわします。
顎下腺(がっかせん) 顎の内側のやわらかい部分(顎の骨の内側のライン)に親指を当て、耳の下から顎の先に向かって5箇所を順番に押します。1箇所5回ずつ。
舌下腺(ぜっかせん) 顎の先端の真下、やわらかいところを親指で5回ゆっくり押し上げます。
なぜ効果があるのか 唾液腺の周辺には筋肉や組織が集まっており、外から刺激することで血流が改善し、唾液腺が活性化されます。 唾液が増えることで、自浄・抗菌・緩衝といった口を守る機能が回復しやすくなります。
無理なく続けるコツ 朝の洗顔のついでに、または歯磨き前の1分間に組み込むのがおすすめです。 道具も不要で、鏡の前でも、ソファに座りながらでもできます。 強く押す必要はありません。「やさしく触れる」程度の圧で十分です。
② 舌回し運動——口周りの筋肉から唾液腺を目覚めさせる
「舌回し」は、口を閉じたまま舌を使って頬の内側を押しながら大きくぐるぐる回す運動です。 唾液を増やす方法として、近年注目されているシンプルなトレーニングです。
やり方 口を軽く閉じ、舌先を上唇の裏に当てるところからスタート。 そのまま舌を歯茎の外側に沿わせながら、右回りにゆっくり10周まわします。 次に左回りで10周。 これを1セットとして、1日2〜3セットを目安に行います。
なぜ効果があるのか 舌を大きく動かすことで、口周りの筋肉(口輪筋など)が鍛えられ、唾液腺への刺激が高まります。 また、舌や頬が動くことで、3つの唾液腺がまんべんなく刺激されます。 口腔機能の向上にもつながるため、飲み込む力や滑舌の改善にも期待できます。
無理なく続けるコツ 最初は舌がつりそうになる方もいます。無理せず1日5周から始めてください。 テレビを見ながら、湯船に浸かりながらでもできるので、「ながら習慣」として取り入れやすいのがメリットです。 顎や首が疲れたら、無理せず休みましょう。
③ よく噛む習慣——食事が最高の唾液トレーニングになる
「よく噛んで食べなさい」という言葉は昔からありますが、これは唾液を増やすうえでも非常に理にかなっています。 噛む動作は、唾液腺に直接の刺激を与える、最も自然な方法のひとつです。
やり方 一口あたり「30回噛む」を目安にしてみてください。 難しければ、「今より10回増やす」だけでも十分効果があります。 食べ物を口に入れたら、一度お箸(またはフォーク)を置いてみると、自然と噛む回数が増えます。
また、噛み応えのある食材(ごぼう・れんこん・切り干し大根・するめ・ナッツなど)を食事に取り入れることも効果的です。
なぜ効果があるのか 咀嚼(噛む動作)は唾液腺への直接的な機械的刺激になります。 噛む回数が増えると、その分だけ唾液の分泌量も増えます。 唾液が増えることで、再石灰化作用・緩衝作用・消化補助作用といった機能が十分に発揮されるようになります。
食後すぐに虫歯になりやすい酸性状態も、唾液の緩衝作用でリセットされますが、これも唾液の量が多いほど素早く働きます。
無理なく続けるコツ 「30回噛む」を毎食続けるのは、意外とハードルが高いです。 まずは「夜ごはんのときだけ意識する」「ひとつのおかずだけゆっくり噛む」といった小さな目標から始めましょう。 噛み応えのある食材を週2〜3回食事に加えるだけでも、習慣化の助けになります。
④ 水分の取り方を変える——「飲み方」が唾液に影響する
ドライマウスの改善に「水分補給が大事」とよく言われますが、ただ飲むだけでなく「飲み方」にも意識を向けると、より効果的です。
やり方 ・コップ1杯の水を一気に飲むのではなく、少量をこまめに飲むことを意識する ・1〜2時間に一度、口を潤す程度の量をゆっくり飲む ・起床後、食事前、就寝前は特に意識して水を飲む習慣をつける ・水または麦茶など、カフェインを含まない飲み物を基本にする
なぜ効果があるのか 唾液の約99%は水でできています。体内の水分が不足すると、唾液の分泌量も低下します。 少量をこまめに飲むことで、口腔内の乾燥を防ぎながら、唾液腺が活動しやすい状態を維持できます。
コーヒーや緑茶はカフェインの利尿作用があるため、過剰に摂ると水分不足を招くことがあります。 嗜好品として楽しみながら、それ以外の時間帯に水や麦茶を取り入れるバランスが大切です。
無理なく続けるコツ デスクや枕元に水のボトルを置いておくだけで、飲む頻度が自然と増えます。 「のどが渇いた」と感じるころには、すでに軽い脱水が始まっていることが多いので、感覚が来る前に飲む習慣をつけるのがポイントです。
⑤ 口呼吸の改善——口を閉じるだけで、乾燥が変わる
唾液を増やす方法として見落とされがちですが、口呼吸の改善はドライマウス対策として最も効果が大きい習慣のひとつです。
口で呼吸すると、常に外気が口の中を通り、乾燥が続きます。 どれだけ唾液腺を刺激しても、乾燥し続ける環境では効果が半減してしまいます。
やり方 日中は「口を閉じて鼻で呼吸する」ことを意識するだけでもOKです。 就寝中の口呼吸が気になる方には、以下の方法が参考になります。
・口テープ:市販の専用テープを就寝前に口に軽く貼ることで、無意識の口開きを防ぎます(鼻炎や鼻づまりがある方には向かない場合があるため、まずは医師や歯科衛生士に相談を) ・舌の位置を意識する:舌先を上の前歯の裏(スポット)に軽く当てる習慣をつけると、自然と口が閉じやすくなります
なぜ効果があるのか 鼻呼吸に切り替えるだけで、口腔内の乾燥を大幅に減らすことができます。 乾燥が改善されれば、唾液の機能(自浄・抗菌・粘膜保護)が本来の力を発揮しやすくなります。 鼻呼吸には口腔乾燥の改善だけでなく、空気を温め・加湿・ろ過してから肺に届けるという全身的なメリットもあります。
無理なく続けるコツ 「鼻が詰まっている」「無意識に口が開いてしまう」という方は、原因が鼻炎やアレルギーにある場合もあります。 その場合は耳鼻科への相談が先決です。 鼻に問題がない方は、まず日中に「口を閉じる」習慣だけからスタートしてみましょう。
やってはいけない!口の乾燥を悪化させるNG習慣
唾液を増やすトレーニングと合わせて、知っておいてほしいのが「避けたほうがいい習慣」です。 善意でやっていることが、実は逆効果になっているケースもあります。
❌ 強い力で舌磨きをする
口臭が気になるからと、舌ブラシで強くゴシゴシこすっていませんか? 舌の表面には「乳頭」と呼ばれる細かい突起があり、過度な摩擦で傷つくと炎症が起きやすくなります。
傷ついた舌は乾燥にも敏感になり、結果として口臭や口腔トラブルが悪化するケースもあります。 舌磨きは「1日1回、朝に、やさしくなでる程度」が基本です。
❌ アルコール成分が強いマウスウォッシュを頻繁に使う
アルコール配合のマウスウォッシュは殺菌力が高い反面、口腔粘膜の乾燥を進める可能性があります。 ドライマウスが気になる方や、口腔内が敏感な方は、ノンアルコールタイプのマウスウォッシュを選ぶことをおすすめします。
「マウスウォッシュを使うほど口が渇く気がする」と感じている方は、成分を確認してみてください。
❌ 水をまとめて一気に飲んで「水分補給完了」にする
「1日2リットル飲んでいる」という方でも、一気に大量に飲む習慣では口腔内の乾燥改善には結びつきにくいです。 水分補給は「量より頻度」が大切です。
口の乾燥対策として水分を摂るなら、こまめに少量ずつが基本です。
まとめ:完璧にやらなくていい。少しずつ、口の環境を整えよう
今日ご紹介した5つのトレーニングは、どれも今日からすぐに試せるものばかりです。
- 唾液腺マッサージ(1日1分)
- 舌回し運動(ながらでOK)
- よく噛む習慣(少しずつ噛む回数を増やす)
- 水分の取り方(こまめに、少量ずつ)
- 口呼吸の改善(まず日中の鼻呼吸から)
全部いっぺんに取り組む必要はありません。 「一番続けやすそうなもの」をひとつ選んで、まず1週間続けてみてください。
唾液を増やす方法に近道はありませんが、毎日の小さな積み重ねが、口の乾燥や口臭を改善する確かな力になっていきます。 焦らず、無理せず、自分のペースで整えていきましょう。
それでも「セルフケアだけでは改善しない」「症状が気になって不安」という場合は、ぜひ歯科や口腔外科に相談してみてください。 唾液の検査や、ドライマウス改善のサポートを受けることができます。
関連記事
まず自分の状態を確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
唾液の機能とは?虫歯・口臭を防ぐ6つの役割を歯科衛生士が解説
平成30年に歯科衛生士免許を取得。
臨床現場で多くの患者さんの口腔ケアに携わる中で、
「毎日歯を磨いているのに、なぜ磨き残しが出るのか」
「どう伝えれば、セルフケアの行動が変わるのか」
という点に関心を持つようになる。
その後、医療現場を“外側”からも理解するため、
関西学院大学大学院 経営戦略研究科(MBA)を修了。
現在は、歯科衛生士としての臨床経験と、
経営・行動変容の視点を掛け合わせ、
「続けられるオーラルケア」をテーマに情報発信を行っている。




コメント